前回までは腰痛が意味付けられることをお話し
ました。そこから腰痛が良い方向に意味付けら
れることで痛みが改善することをお話したかっ
たのです。
しかしその前に、「実際に腰の奥の方では何が
起こっているのか」を患者さんはどうしても知り
たいものです。だから説明する必要がありますね。
この問題、一見単純と思われるけれどもいろいろ
な意味で複雑です。
複雑なのは、前述したように腰痛に対しては様々
な解釈の仕方がある(気の流れのアンバランスや
骨盤のゆがみなど)のだから、どの解釈が一番
妥当なのか?という問題があります。
そして、情報の受け取り手が様々に解釈してし
まうからです。情報発信側が細心の注意を払って、
情報の受け取り手の解釈まで想像しながら発信
することが理想なのですが・・・。
やってみます!
とりあえずここでは現代医学的な考え方が妥当
としておきます。理由は次の通りです。
・私たちの社会は近代科学の研究成果によって
機能している側面が多く、現代医学もまた近代
科学の発展の延長線上にあります。私たちに
とっては便利な現代社会が当たり前であるのと
同じように現代医学の考え方が当たり前とされ
ていることが多いため。
・日本で現代医学は正統医療として制度化され
ており、例えば法律においても西洋医学の解釈
が妥当なものとして扱われているため。
・人体を部品の集まりと捉えた時に現代医学の
考え方が部品を厳密に研究していると私自身が
勝手に解釈しているため。
・どの解釈を採用しても意味付けには変わりが
ないため。
よってとりあえず現代医学的な解釈から「腰の奥
で何が起こっているのか」をざっくりと説明しま
しょう。(いつもながら前置きが長くて申し訳
ありません(笑))
腰痛の原因についてはいろいろ考えられますが、
痛みが出る場所として最も妥当な場所は、椎間板、
椎間関節、神経根と考えられます。
まず、基本構造の説明です。腰椎とは背骨のなか
でも腰を構成する5つの骨をいいます図1。
図1
上下の腰椎は椎間板図2-①と左右の椎間関節②で連結されています。
腰椎と腰椎の間には椎間孔③という穴があり、
ここから下肢へ向かう神経が出ています。
この神経の根元の部分を神経根④といいます。
ほとんどの腰痛は椎間板の変性をきっかけに
段階的に引き起こされるとされます。それに続い
て椎間板、椎間関節、神経根が刺激を受けて発症
するものと考えられています。
腰椎変性の医学的ストーリーは次の通りです
(図3)。
椎間板は上下の腰椎をつなげ、クッションの役目
もします。体重を支え、血管が少ない椎間板は
非常に変性が早い組織と言われています。変性
とは生物学的には正常な組織でなくなることです。
つまりは新しく作り変わらないということで
老化と言い換えることもできます。椎間板の
老化は20歳から始まるといわれます。
この椎間板が変性(老化)を起こします。
そうすると、椎間板の周囲に分布する脊髄洞
神経(洞脊椎神経)という神経が刺激を受けて
痛みが出ると言われています。(図は私が勤め
ていた古東整形外科のウェブサイト をご参考く
ださい。上から4つ目の図です。)
この神経が椎間板からの痛みを脳に伝えます。
椎間板の変性は椎間板の高さが低くなることに
つながります。言い換えるとへしゃげるわけです。
「骨と骨の間が狭くなっている」と説明され
るのはこの状態です。
椎間板と左右の椎間関節で上下の腰椎が連結し
ているので前の椎間板がへしゃげると、後ろに
ある左右の椎間関節もストレスをうけることに
なりますね。
このストレスによって刺激を受けた椎間関節は
脊髄神経後枝という神経を通して、痛みを脳に
伝えます。
さらに、椎間板のへしゃげは腰椎を変形させて
椎間孔を狭くします。狭くなった椎間孔は
神経根を圧迫します。そうなると腰の痛みだけ
ではなくお尻、ふともも、ふくらはぎに痛みが
出るようになります
図3
椎間孔がへしゃげなくとも神経根が刺激を受ける
ことがあるようですが、それはこれらの部位が
近いために炎症が相互に波及するためでしょう。
椎間板の痛みの特徴は前にかがんだ時に痛むこ
と。
椎間関節の痛みの特徴は後ろに反った時に痛むこと。
神経根の痛みの特徴は下肢が痛むことです。
椎間関節の炎症はそれぞれ近い位置にあるため
に双方に波及するらしいのですが、椎間板と
椎間関節の近くには椎間孔があり、そこには
神経根があります。この神経根も刺激を受けて
炎症を起こすのです。
これらの部位は単独に刺激されると比較的単純な
症状を呈するのですが、部位が複数にわたると
症状は複雑になってくるでしょう。痛みが出る
部位をツタナイ図4にしましますね。図では
右側に痛みが出ていますが、もちろん左にも
出る可能性があります。その時には左の椎間関節、
神経根が刺激を受けていると考えられます。
図4
よくみられる臨床症状としては
「動き始めだけに痛みがあってその後は痛み
なく動くことができる」とか、
「立っていることや座っていることに関係なく
同じ姿勢を続けていると鈍い痛みが出てくる」
「腰には痛みはないがお尻が痛い」
「腰には痛みはないがふとももが痛い」
というもの、そしてこれらの混合した症状です。
上記のようにいわゆる腰痛は大まかに説明する
ことができます。
有名な椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、
腰椎変性すべり症などは上記のストーリーの
延長線上にやってくる腰痛ですが、ここでは
踏み込みませんね。
別の機会にアップしたいと思います。
さあ、重要なのはここからではないでしょうか。
次にはこれらの情報を元に、よいイメージ、
よい意味付けを行うことが腰痛改善につながる
ことを解説していきたいと思います。
できるかな・・・・。
*古東整形外科へのリンクには許可が必要です。
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(つづく)