小川鍼灸整骨院のブログです。
私たち治療者が苦労して身につけた理論や経験が治療者の声として患者さんに届く(受け入れられる)ことがなく、テレビや隣人の助言が患者さんに受け入れられるのはなぜでしょうか?
それは、その言葉が、治療者が「あてがう」言葉ではなく、患者さん自身が「拾い上げる」言葉だからではないでしょうか?
治療者が「あてがう」言葉と患者さんが「拾い上げる」言葉。
この違いを表現するのは難しいですね。読者の方に届けばよいのですが・・・・。
Mさんの場合、治療者があてがう言葉とは、治療者である私がMさんの辛さがいつ終わるのかについて、理論的な観点を元に発した言葉です。
この言葉はどこまでも外からあてがわれたものであるために、患者さんはその言葉を元に自分の状況を解釈していく必要があります。
この作業は患者さんにとっては難しい作業です。
しかし、患者さんが主体的に拾い上げる言葉は、患者さん自身がしっくりくるために拾い上げられた言葉なのです。自分がしっくりくる言葉を拾い集めてMさんは自分が主体的に行うことができる解釈を創り上げていきます。
これは外側からあてがわれた言葉を元に解釈することとは正反対の作業となります。
自分がしたいように解釈することになりますので作業としては行いやすい作業となるでしょう。
だから患者さんの心に「ストン」とふに落ちるのでしょうね。
というか、自分で拾い上げるから納得しやすいのは当然のことなのでしょう。
患者さん自身が、原因がわからないとされる痛みに対してふに落ちる解釈をできた時に、痛みから解放されることが多いようです。
それは、科学的な信憑性とは別の次元で、患者さん自身が主観的に納得するということでしょう。
このような、主観的な納得に基づく患者さんの回復について文化人類学者は、原因がわからないとされる状態から、原因がわかった!という状態に入ることができ、宙ぶらりんの不安から解放されるためと説明しています。
(松岡悦子著、波平恵美子編:文化人類学で扱われてきた宗教、系統看護学講座基礎9文化人類学、医学書院、1993、pp.150-166)
では、患者さん自身が「ストン」とふに落ちるようにするために医療者には何ができるのでしょうか?
これは難しい問題です。
表現するにも難しい。
あえて表現するとすれば、「患者さん自身が解釈したいように解釈することを促す」?ということになるでしょうか。
この場合、専門家は自分の専門性にふたをする必要があります。私たちは専門理論も持っているがために専門家として存在しえるのですが、患者さんの前でその専門性をあえて表に出さないのです。
それどころか、時によっては患者さんの問題について、患者さんがどう考えるのかを引出し、その話に興味を示しながら教えてもらうという態度を示す必要があります。
ここでは、治療者のほうが治療のための知識をもっていて患者のほうにはそれがないために成立している「患者は治療者に従う」という従来の関係性は成立しません。
「患者さん自身が解釈したいように解釈することを促す」ために治療者はこの関係性を逆転させて患者さんから患者さん自身が症状をどのように捉えているのかを教えてもらう態度が必要ではないでしょうか。
そうして知ることができた患者さんのお話しを利用して患者さん自身がふに落ちる落としどころを見つける、そしてそこに患者さんを着地させてあげるということが「患者さん自身が解釈したいように解釈することを促す」ことになると思います。
このように、「患者さん自身が解釈したいように解釈することを促す」ことは、そう簡単なことではなさそうです。
治療者自身が単に理論を駆使して治療を行うのではなく、時には自分の理論にふたをして患者さんの話の流れの中に自分の身を置いてみるという作業が必要になると思います。
この作業、しっかり勉強してしまった治療者にはけっこうキツイ作業なんですよね。
話がここから拡散していきそうなのでこの回を終わらすべく、強引に話を元の問いである「治療者の言葉が患者に届くかどうか」という問題に立ち戻りたいと思います。
結論として私は、「患者さんは治療者が意図したとおりに治療者の言葉を受け取ることはない」と言いたいです。
この、治療者にとってネガティブで暗い答えのかわりに私は、ポジティブで明るい提案をしたいと思います。それは以下の通りです。
患者さんは基本的に自分が受け入れたい情報を断片的にかき集めて、自分が解釈したいように解釈するので、その解釈が可能な限り患者さんにとってポジティブで最大幸福につながるように治療者は努力する!
この努力の結果に患者さんの最大幸福が訪れたとすれば、それは治療者の貢献であり、治療者の声が患者に届くことと同じ価値があるといえるのではないでしょうか。
(おわり)
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