小川鍼灸整骨院のブログです。
北スマトラの文化的な背景である精霊信仰の世界観、そして人間関係を重んじる北スマトラの社会観、さらにそこへ個人的な出来事が合致したときに、サキット・ポロンに陥るとここまで述べました
どの文化においても、人が目前の出来事を解釈する際には、下のようなしくみをみることができるといえます。このしくみは、北スマトラの人たちがサキット・ポロンを認識するしくみにも設定できるものです。
「人がもつ文化的な常識→人がもつ社会的な常識→その人の状況→出来事の解釈」
往々にして、文化的な常識と社会的な常識が切り離せないこともあるので、下のようになることもありますね。
「人がもつ社会・文化的な常識→その人の状況→出来事の解釈」
例えば、社員食堂で若い中肉中背の女性社員が小さなおにぎりを一つだけ食べているという状況をみて、ある人(中年男性この女性と同年代の娘を持つ)は次のように解釈するかもしれません。
「彼女、今ダイエット中だな」
これは妥当というか、深く勘ぐっていない、素直な解釈だと思います。
中年男性はこれまでの経験の中で、日本人女性がやせ願望をもち、特に十代後半から20代の女性にその傾向があることを知っていますし、現に自分の娘がそうだからです。
この、「彼女、今ダイエット中だな」
という解釈は、
「多くの日本人女性がやせ願望をもっている」
という現代日本の社会・文化的な背景と、
「自分の娘もやせ願望をもっている」
という中年男性の個人の状況からうまれたものでしょう。そして、この中年男性の隣で食事をしていた同僚もきっと彼の意見に同意するのではないでしょうか。
この中年男性は、彼女がダイエット中であるかどうかをわざわざ彼女に確認しませんよね、普通は。その限りにおいて、この中年男性の解釈は、そのまま現実となってしまうでしょう。
そして、同僚がそれに同意することにより、彼女がダイエット中であるという中年男性の現実は現実味を帯びることになります。
この女性が以下のような女性であったとしてもです。
彼女は、30代半ばであり、当日は運動盛りの長男の弁当を味見をしながら作っているうちにお腹いっぱいになって、今日のお昼はおにぎりを一つだけにした。
元アスリートで筋トレを毎日しているためにがっちりした体形でその体型に誇りを持っている!
という女性だとしたら・・・・
中年男性の解釈は社会的に妥当な範囲でありながら、実際には異なっているのですね。
このことは、人が目前の現実をどのように構成するのかを非常にザックリ説明したものであり、社会学の領域では「社会構成主義」といわれる考え方に属します。
そしてそれらの現実の見方はいつも真実を捉えているわけではないのです。
1つの解釈を捉えているのです。
サキット・ポロンも同じことです。社会文化的に当たり前とされた常識(精霊が人に働きかけること)の中でその常識範囲内で説明可能な解釈を行い、それを現実として捉えた結果、サキット・ポロンと認識されるのでしょう。
サキット・ポロンは本人がそのように捉えることもありますが、本人は無自覚でありながらも周囲がそのように捉えることもあるのでしょう。
事例2は、本人は無自覚でありながら父親がサキット・ポロンと判断した例ですね。
ちょっと難しくなってきました!
ちなみに、上記のような説明に同意しない学者もいるようです。だから上記の説明が絶対的なものではないことに十分注意してください。
ただ私は、上記のような考え方が「原因がわからない痛み」の治療に利用できるのではないか?と考えているだけです。
常に患者さんの現実と向き合おうとする臨床家として。
さて、ここでのポイントは、
「文化・社会的な常識→個人の状況→出来事の解釈」です。これが現実を構成する基本的なしくみといえます。
そしてこのポイントが「原因がわからない痛み」をうまく説明してくれるのです。
ようやくここまでたどり着きました。
次回は上記のポイントを通して、実際の腰痛に迫ってみようと思います。
(つづく)
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