痛みと病人役割  【大阪 平野区 生野区 南巽 整骨院 腰痛】

 

今日、興味深い患者さんとのやり取りがあり

ました。

Sさんは10日ほど前から膝関節の痛みで通院され

ています。

初診時は関節にたくさん水が溜まっていて、

とりあえずは提携先の診療所で水を抜く方が早く

痛みが取れることを提案させていただいたのです

が、Sさんご自身が注射を嫌がるタイプの方で

したので鍼治療で対処することになりました。

Sさんは5年前に交通事故に遭われて大けがを

してからパニック発作を起こすようになり、

環境の変化や過度の刺激に過敏になっておられ

るとのことでした。

 

注射もパニックの引き金になるとのことです。

 

でも鍼はOKなんですね。

鍼治療を続けて1週間ほどでSさんは旅行の予定が

あることを話してくれました。

 

そしてその前に観劇に出かける予定があることも

話してくれました。

Sさんは、

 

「観劇や旅行に行っても自分の膝は大丈夫か

(悪くならないか)?」

 

ということを私に聞きたかったのです。

私はSさんに

 

「大丈夫です。旅行も観劇も十分に楽しむこと

ができるのであれば痛みは乗り越えられると思い

ます。後で痛みが強くなる可能性もゼロではない

ですが、安静にしていても痛みが強くくなること

もあります。どっちにしても絶対的に痛むとも

いえないし痛まないともいえないので、それで

あれば楽しんだ方がいいのではないでしょうか?」

 

とアドバイスしました。

実際に痛みは動き始めが一番強く、その後は十分

に歩いておられるのです。

 

変形性膝関節症の典型的な症状です。

私のアドバイスにSさんは喜び、旅行にも観劇に

も出かける意志を私に伝えてくれました。

しかし数日後Sさんは、

「先生、やっぱり観劇はやめました。旅行に行か

ないといけないし。なにより普段痛い痛いと言っ

ているのに楽しいことは痛くないのかと思われ

てしまったら助けてほしい時に助けてもらえ

ないから(笑)」

 

と言って観劇をあきらめたと話してくれました。

私はここでSさんに確かめてみました。

次のように話しかけたのです。

「なるほどSさん、Sさんは今のところ病人と

なっているので、病人は病人らしくしないと

いけないということですか?」

するとSさんは

「そうですそうです、やっぱり助けてもらわない

といけないものね、これが家族円満の秘訣だと

思います(笑)」

と笑顔で話してくれました。

 

病気になった人は社会的な義務、責任から解放

されます。このことは、病気になった人の周囲

の人(社会)は、病気と認定された人を社会的

な義務や責任から解放するということです。

 

そのかわりに、病気になった人は 病人として

の役目を全うしなければいけないのです。

 

たとえば体調がすぐれない人は仕事を休むこと

ができます(もちろんその際には休むにふさわ

しい程度の辛さが必要とされるのですが)。

そして、仕事を休んで義務や責任から解放され

るのだからそれにふさわしい休養をとることが

期待されるのです。また周囲の人は常識として

休養の間、病気の人が必要なサポートを提供する

ことになります。

 

この時期に休養をとらずにデパートに買い物に

出かけたり楽しい時間を過ごしてしまうと、

病人としてふさわしくない行動ということになり

社会から非難されることになります。

 

期待されるだけの休養、病気を治すための努力を

している限りにおいて義務や責任をのがれること

ができるのですから。

 

この現象は、医療社会学という学問領域で

「病人役割」として古くから取り上げられて

います。

 

Sさんは痛くて出かけることができないから観劇

を取りやめたのではありません。

 

これからも家族からの助けを円滑に引き出すため

に本当は楽しみにしていた観劇をあきらめたの

です。

本来、膝が痛くて観劇に行くかどうかを悩んで

いる人が抱く観劇をあきらめる正統な理由は、

「痛みがあるから劇場までの道のりを乗り越える

ことができない、だから今回は観劇をあきらめた」

というのものでしょう。

しかし、Sさんは観劇に行ける程度の痛みなのだ

けれども観劇をあきらめたのです。

ここには明らかに、実際の痛み以上の痛みを周囲

に訴えるという社会的な構造が存在します。

 

いいかえるとSさんの痛みは

 

「痛みは社会的に創り上げられた」

 

ことになるのです。

このように、病気になってしまった人とそれを

とりまく周囲の人たちとの人間関係のなかで

痛みは、実際の痛みよりより大きく訴えられる

ことがあります。

 

Sさんであれば、観劇をやめるほどの痛みでは

ないけれども、観劇をやめて痛みの存在を

アピールすることです。これによって、周囲に

自分の病気の存在を認めてもらい、必要な援助

を引き出すことができるのです。

 

この問題が難しいのは、患者さん自身がこのこと

に無自覚であるということです。

 

患者さん自身が無意識のうちに上記のような行動

をとっているのです。

 

痛みの治療にはこのようなことも関係してくる

のでむずかしさが更に深まっていくといえます。

 

患者さんは自分の無意識の部分をポジティブに

見つめなおし、治療者は患者の身体のみならず

心理的な反応までも学問的な分析の対象とする

必要があるのです。

 

病人役割

つづく

 

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