小川鍼灸整骨院のブログです。
精神科医アーロンベックはうつ傾向に陥る人には特有の自動的な認知の過程があることを提唱しました。
それらは
「自己関連付け」、
「分極化した考え」、
「選択的抽出」、
「恣意的推論」、
「過度の一般化」
などです。
実はこの認知の過程は、私が治療者として腰痛患者さんと行う会話のなかでもよく遭遇するのです。
具体的に説明していきましょう。
「自己関連付け」は、接した情報が自分に当てはまるのではないか?と患者さんが過度に考えてしまうことです。
「た○しの本当はこわい○○の医学」という番組は製作者がこのことをうまく利用して作ったのではないでしょうか?私は情報番組をみて「自分もそうではないか?」と心配になって治療にいらっしゃった患者さんを多く経験したことがあります。
腰痛患者さんでも「私はもしかしたらヘルニアじゃないか?ヘルニアは手術をしないと治らないのでしょ」とヘルニアでない腰痛患者さんが周囲の情報から自分の腰痛を高く見積もりすぎて症状を膨らましている事例に出会うことが度々あります。
「分極化した考え」は白か黒かをはっきりさせたい考え方だそうです。
痛みが少しでもあればそれは完全に治ったわけではないとして活動を制限してしまう患者さんはこの思考を自動的に行っていると考えられます。
「痛みがあっても動ける」という両極性の考え方ができないのでしょう。また、「重たいものを持ったら(激しい運動をすれば)絶対に腰が痛くなる」
と決め込んでいる患者さんにも過度に偏った考えをもっているということで当てはまるかもしれません。
もちろん痛みが厳しく、実際にそのような状況の人もいます。
しかしここで取り上げているのは、医学的な診立てからは明らかに運動しても大丈夫と思われるような患者さんです。
「選択的抽出」は「文脈の中からある部分を抜き出し、そのために状況全体の重要性を見失ってしまうこと」とベックは紹介しています。
ほとんどの人は痛いと言いながらも日常生活を送ることができている人が多くいます。
しかし中には時に動き始めだけに出てくる鋭い腰痛に対して「この痛みがどんどん大きくなっていって以前に経験したぎっくり腰のようになるのでこの痛みをなくさないといけない」と解釈する人もいます。
もちろん、この人も日常生活を全うできている人なのです。この人にとって重要なことは痛みがありながらもなんとか日常生活をやりこなせている事実ではないでしょうか。
しかしこの人はその実績に目を向けることなく時に現れる痛みに意識が集中してしまうようです。
「恣意的推論」は「証拠がない場合や実際に全く正反対の証拠がある場合に(あるにもかかわらず)、ある結論に飛躍すること」
と紹介されています。
腰痛患者さんでは、「雨が降ると痛みが強くなる」という話がよく聞かれますね。
晴れの時にも痛みを訴えているのですがそこには言及せずに雨の日の痛みが特に強く強調されるのです。
きっと雨の日に痛みが出ないときもあるのでしょうが、そのことについては言及しないのです。
晴れでも雨でも痛みがない日の痛みの記憶はないのでしょう。当たり前かもしれませんが。
そして最終的には天気予報で明日が雨だと知った時から自分の腰痛に意識を集中させ過敏に反応するようになるように思われます。
「過度の一般化」は「1つの出来事に基づいて妥当でない一般化を行うこと」と紹介されています。
腰痛患者さんでよく聞かれるお話は、一度ある動作で腰に痛みを感じた時には「また同じことすれば絶対に痛みが出る」というようなものです。
また、自分の父親がヘルニアで辛い思いをしており、自分も腰痛をもっているのでヘルニアは遺伝するものであると考える人や、職場で2人の職員がヘルニアになったという事実から自分の仕事はヘルニアになりやすいし自分もそうなるのではないかと考える人の思考過程も「過度の一般化」と考えられます。
以上がベックが提唱したうつ傾向に陥る患者の認知の過程を腰痛患者さんに置き換えた私の考えです。
ベックはこの認知の過程を患者さん自身に意識してもらうことで抑うつ的な状態になることを回避することができると以下のように記述しています。
「したがって、そうした区別を明確化し、誤った概念化を修正し、より適応的な態度を身に付けることによって、心理的な問題が克服できるようになる可能性がある。」p13
自分にしか苦しみがわからない腰痛(腰痛に限りません)を持つ患者さんの症状は、患者さん自身の腰痛に対する意味付け(認知)によって創り上げられたものではないでしょうか。
そして患者さん自身が自分の思考の過程に気付くことができた時に、つまり、腰痛の意味が創り上げられていることに気付いた時に腰痛が劇的に軽減することがあるのです。
注意していただきたいのは、現在の私は上記の考えがすべてだとは思っていないことです。
患者さんが行う意味付けを解消することですべての問題が解消するということはありませんし、そもそも意味付けの解消は非常に難しい問題です。
しかし、「患者の認知がゆがんでいる」という考え方が治療に有効な場合があり、それでよくなる患者さんもいらっしゃるのは確かです。
だからここで取り上げるのです。
ベックの考えを用いて良くならない患者さんもいらっしゃるのです。
ご安心ください。
そのような患者さんには別の考えがあります!
このような考えをたくさん持っておくことが治療者としての「引き出しが多い」ということになるのだと私は信じて研鑽を続けています。ちょっとカッコイイこといっちゃった、てへ。
(つづく)
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