はじめに
小川鍼灸整骨院のブログです。今回は、整形外科医である長川浩隆先生の「腰痛をこころで治す-心療整形外科のすすめ-」という本を紹介いたします。
内容
長川先生は、整形外科医ですが、心療整形外科という言葉をつくりました。
理由は、ご自身の治療経験のなかで、患者さんが訴える症状に心の問題が関係していると考えるからです。しかし患者さんも施術者も、症状の原因を体だけに求めて心の問題を無視しており、このことを問題として提起されております。
タイトルは「腰痛をこころで治す」となっていますが、中身は腰痛だけの話ではありません。膝の痛みや背中の痛みなどでお困りの患者さんも人間関係や不安、心配事などが原因で症状を大きく捉えている患者さんがいることが紹介されています。
そして、そういう患者さんの治療の難しさもここに書かれています。参考までに一文を抜粋させて頂きます。
第3章「腰痛をこころで治す」p91
『「病は気から」ということわざがあります。字の通り読めば「身体疾患は心理的要因から起こる」ということであり、まさしく心身症やストレス疾患指しています。しかし「病は気から」というということわざには、「症状はあるけど、気持ちの問題、気のせいだから大したことはない」というニュアンスがあります。痛みがあり心理的要因に気づいている患者さんほど「病は気から」ということわざを引き合いに出して、我慢してしまうのです。
心理的要因と「気のせい」とは全く違うものです。しかし患者さんは心理的要因を「気のせい」と考えて、気のせいで病気になる自分をよしとしません。すると患者さんは、医師の心理的治療を否定して身体的治療を熱望します。まずは患者さんが「気のせい」ではない心理的要因に気付くことが治療への近道なのです。』
当院の意見
長川先生の記述には深く共感するところがあります。
私は、鍼灸師・柔道整復師でありながら主な修行を整形外科クリニックで行ないました。そのクリニックでは毎日500人ほどの外来患者さんが来院して、300人ほどはリハビリ室で施術を受けて帰られます。それらの患者さんの施術を短い時間の中で効率よくこなしていくのですが、整形外科理論を駆使しても治らない患者さんがたくさんいました。
私が勤務していたのは20年以上前でした。当時は患者さんの心理社会的背景については今ほど取り上げられていませんでしたので、漫然と治療を行なっていました。そんな中で治療における心理社会的背景に興味をもって早稲田大学と放送大学大学院で臨床心理学や社会学を学び、現在は患者さんの体だけではなく、心の問題も考慮しながら治療を行なっております。
立場は異なりますが、長川先生と同じ興味を治療の中で感じていきました。ここが共感の理由です。
整形外科の臨床でも私たち代替医療の現場でも、体の問題に心の問題が必ず関係してきます。むしろ、整形外科の現場よりも代替医療の現場のほうが心の問題と関連する症状をお持ちの患者さんは多いと思います。しかし長川先生も記述されている通り、施術者も患者も、体に感じる症状は身体だけの問題であると捉えていることが多いのです。
このことが、「どこに行っても良くならない患者さん」を作り上げていると私は考えます。
私は、どこに行っても良くならない患者さんの治療をライフワークにしています。しかし、常日頃思うのはこの治療の難しさです。
この難しさは「患者さん自身が自分の症状の心理的な側面に気づきにくい」というところです。
この難しさは、谷川先生の本に対する以下の書評の中にもあります。
・「私も腰痛持ちなので、参考になる点も沢山ありましたが、今一つ心療整形外科の内容まで十分理解できなかった。(読みが浅いのかな?)痛い時は、ついつい薬に頼ってしまいますが、改めて読み直してみます。」
・「自分が腰痛で手術しても良くならない為、何の役に立つかと思ったが期待外れだった」
このような患者さん方に私たちにもよりしっかりと向き合って行きたいものです。
どこに行っても良くならないと、ご自分の症状にお困りの患者さんにも是非ともこの本を読んで頂きたいと思います。理解に苦しむようでしたらどうぞご質問くださいませ。
おわりに
小川鍼灸整骨院では、どこに行っても良くならないとお困りの患者さんに対して、はり治療や筋膜リリース、整体、アロマセラピーなどを用いて施術を行なっております。大阪の平野区、生野区あたりでどこに行っても良くならない痛みでお困りの方は小川鍼灸整骨院にご相談ください。小川鍼灸整骨院は地下鉄千日前線南巽駅①出口から徒歩1分のところにあります。
文献
1)谷川浩隆:腰痛をこころで治す 心療整形外科のすすめ.株式会社PHP研究所,2013,東京.
2)谷川浩隆:自著とその周辺,腰痛をこころで治す 心療整形外科のすすめ.信州医学雑誌 , 62 巻 4 号 254,2014.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinshumedj/62/4/62_254/_pdf/-char/ja