小川鍼灸整骨院のブログです。
前回は、人はいつでも自分が接するものや出来事について正しく認知していない可能性があることを指摘しました。
体や健康問題についての認識についても同じことが言えるのではないでしょうか?
体に関する解釈の仕方はさまざまです。腰が痛いと訴える患者さんに対して、カイロプラクターは、「うーん、腰に痛みが出ているがこの痛みは頸椎のゆがみが原因だ。頸椎のゆがみをスラスト(整体のようなもの)して矯正してあげれば、生体エネルギーの流れが改善されて腰痛はなくなる・・・」というかもしれません。
整体師は、「背骨と筋肉のバランスが悪い。特に脊柱近くの筋肉が緊張して骨盤を引っ張ってゆがみが生じている。この筋肉を柔らかくして骨盤のゆがみを矯正すれば腰痛はなくなる・・・」というかもしれません。
鍼灸師は、「膀胱と関係するツボに異常がみられる。気が多すぎるのだろう。鍼をして多すぎる気を開放して気の流れを整える必要がある。うまくいけば腰痛はなくなるだろう」というかもしれません。
足つぼマッサージ師は「腰に関係するツボにしこりがあって、ここを押さえると痛みがあるでしょ、これは腰が悪いということを表しているのです」というかもしれません。
腰痛を持病としてもつ隣りの親切なおじさんは、「その腰痛はしびれがないからヘルニアではないな、わしがヘルニアになる前と同じ状態じゃ。重たいものを持ちすぎるとそうなるから注意が必要じゃ」というかもしれません。
もしあなたが非常に忙しく働きづめであったとして、そのことを知っている近親者は「最近休む間もなく働いていて腰への負担が大きくなったのでしょう。少し休んだ方がいいんじゃないの」というかもしれません。
もしあなたがなまくらものであったとして、そのことを嘆いている近親者は「横になってばかりいるから腰が痛くなるのよ、運動不足よ」というかもしれません。
もしあなたが太っていたらあなたの母親は「太りすぎよ」というかもしれません。
もしあなたがやせていたらスポーツジムのトレーナーは「筋肉が足りない」というかもしれません。
あなたのおじいちゃんは、「雨のせいだ、もうすぐ雨が降るよ、わしも痛くなってきたもの」というかもしれません。
栄養を気にするあなたのお母さんは「カルシウムが足りなんじゃない?」というかもしれません。
と、言い出せばきりがないんですけども、腰痛に対する解釈は様々です。
上記のアドヴァイスをする人たちはそれぞれの視点から腰痛を捉えています。そして腰痛を解釈しています。
これらの解釈はそれぞれの視点に従えば正しいかどうかは別として、間違っていると証明することはできません。
つまり、何が正しいかと決めることはできないので何が間違っているということもできない。そうなれば、腰痛患者さんに行うべき治療はおのずと決まってくるのではないでしょうか?
私は、次のように考えます。 患者さんが自分の腰痛について説明を受けた際に、「そうだったんだ!自分の腰痛はそのために起こっていたんだ!」と納得できることが重要であると。
たぶん、その納得の過程では、アドバイスをする側の言葉が受ける側の背景や文脈にぴたっと当てはまるという現象が起きているのではないでしょうか?
それは例えば、自分が忙しくしていて疲れを感じている時に頸椎のズレによるエネルギーバランスの乱れを腰痛の原因として指摘されるよりは、立ちっぱなしが腰に負担をかけていると指摘される方が忙しい自分の文脈にフィットしていて受け入れやすいということです。
「頸椎のズレによるエネルギーバランスの乱れ」のような治療者の理論を受け入れる患者さんもいますが、治療者の権力によって同意させられた場合ではないでしょうか?
もしくは患者さん自身が昔の軍医のような権威的で治療者の言うことに異論を許さないタイプの治療者に特別な頼もしさを感じる場合かもしれません。
患者さんが自分から、または内側から納得する際には、必ず自分の文脈に合っている説明がなされているのだと思います。 それは例えば、占い師に占ってもらって自分がまだ話していないようなことまで当てはまるような・・・。
そのようなときは、それはつまりアドバイスする側の意見が自分のなかにストンと入ってくるのでしょうね。
この「ストン」が実はむちゃむちゃ大事なんですね。 ではこの「ストン」を生み出すためには何が必要か?
(つづく)
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