小川鍼灸整骨院のブログです。
これまでベックの認知のゆがみ理論やブローディ―の記述、文化人類学者吉田先生の記述を元に、人の痛みが意味付けられたものであることを述べてきました。
一見すると、痛みが意味付けられることは「悪いこと」ととらえられそうですがそうではありません。
私たちは身の回りのモノや出来事に対して、意味付けを通して解釈するようになっているようです。
だから意味付けすること自体は当然のことなのです。
痛みに対しても。
ベックが抑うつ傾向にある人の認知の特徴を「認知のゆがみ」としてまとめましたが、私たちは抑うつ傾向になくともゆがんだ認知を普通にやっています。
「過度の一般化」は特にそうです。
例えば私は患者さんからよく「先生はいのししだから一直線で融通が利かないんじゃないの?奥さんは大変ねえ(笑)」と言われることがあります。
「いやいや、昭和46年生まれの人はみんないのしし歳ですから!僕の生まれ年の人はみんな融通が利かないの?そんなはずないでしょ(笑)」と、心の中で突っ込みながら、「いやー、そうなんですよ、妻は苦労していると思いますよ、あははは(笑)」
と言葉を返すようにしています。
血液型で人の性格を推し量ろうとすることも「過度の一般化」ですね。
私はよく、「えー!先生B型なんだ!人は見かけによらないのね」とも言われることがあります。
B型は自己中心的らしいのです。
この言葉を私に投げた患者さんは、私が自己中心的なようには見えないから意外だと言っているのです。
この人には「B型の人は自己中心的」という大前提があるのです(笑)。
そんなあほな・・・。私の家族は全員B型です(笑)。
「自己関連付け」にしても、基本的に人は自分に置き換えて考えますし、「分極化した考え」だって極端なことを考えることはよくあります。
「選択的抽出」なんて、大阪のおばちゃんにはよくあることです。
話の途中で自分が取り上げたい単語があればそれに全神経を集中させて話を膨らませてしまい、途中で何の話をしていたのかわからなくなる・・・
この現象は話の内容を選択的に抽出して自分が好きなように話の内容を解釈してしまうために起こるのでしょう。
もう少し話を聞いてくれれば全く違う話をしていることがわかってもらえるのに・・・。
「恣意的推論」だってそうです。
推論ですからそもそも真実にたどり着くかどうか本来わからないものなのですが、ただあまりにも飛躍しているのです。
過去の出来事や周囲の情報の断片を集めてあたかも自分が見たかのように話す人は普通にいますよね。
このようなことは枚挙にいとまがありません。逆に私たちは知っていることだけから自分の考えを創り上げているのではなく、知っていることを元に知らない部分を創り上げながら外界を認識しているのではないでしょうか。
こうなると、私たちは物事を正しく認知すること自体が実は非常に難しいことではないか?
という考えに至ってしまいます。
では正しい認知とはいったい何なのでしょうか?
正しい認知なんてあるのでしょうか?
そんなもの存在するのでしょうか?
いや、確かに現象をあるがままに認識することが正しい認知かもしれません。
しかし、正しくなくともことはうまく運んでいる・・・・
そうなれば正しい認知とは、その人が生活する上において、不都合が生じないような外界の捉え方と言ってしまってもいいかもしれませんね。
実際は昨日の阪神巨人戦で阪神が9回裏に8点をひっくり返されて逆転負けしたにもかかわらず、テレビ中継の途中で眠ってしまった阪神ファンが昨日の試合は阪神が勝ったと思い込むこと自体に誰が損をするでしょうか?
正しい認知は阪神が負けたことを知ることなのですが。
確かに球団関係者にとっては非常に重要な問題です。しかし、ファンにとっては勝ったと思えることの方が良いことが多いかもしれません。
認知のゆがみが問題となるのは、日常生活をやりこなすことができないような健康問題を引き起こす場合です。
ある人の認知が仮に事実とは違っていてもまわりの人が迷惑をこうむることなく、そしてその人自身にも不都合なことが起きないのであれば、その認知は間違っていたとしても問題となることはないのです。
世の中には、客観的な事実を正しく認知しなければいけない時と正しく認知していなくとも良い時があるようですね。
「嘘も方便」という昔からの言い回しもここからくるのではないでしょうか?
ではここまでの認知のお話を腰痛にすり合わせることにしましょう。
もちろん腰痛以外にもいろいろな痛みについても基本的な考え方は同じだと思います。
(つづく)
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鍼灸・筋膜リリース・整体と同時に認知行動療法の理論を応用して治療に用いています。
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