はじめに
小川鍼灸整骨院のブログです。
みなさんはエビデンスという語を聞いたことはありますか?
デジタル大辞泉によれば、
1 証拠。証言。
2 医学で、臨床結果などの科学的根拠。その治療法がよいとされる証拠
と記載があります。
エビデンスと言う語は、特に医療現場、『EBM(エビデンス・ベ-スド・メディスン):根拠に基づく医療』という語中で良く用いられます。
似た意味として用いられやすいですが、エビデンスとEBMという語は同義語ではありません。
EBMとは
EBMとは医師や治療者の権威、あやふやな経験や勘、想いつきなどによって薬や治療法を選択するのではなく、
質の高い論文や臨床研究など、入手できる最良の証拠と患者の個別性を考えて行う医療を指します。
EBMは、1991年にカナダの医師であるゴードン・ガイアットによって提唱され、その後医療界に浸透しました。
日本では厚生労働省が1999年度から標準治療として、EBMに沿った診療ガイドラインづくりを始め、各学会も多くのガイドラインを作成しています。
EBMの5ステップ
EBMの手順は、次の5つからなります。
Step1:患者の問題の定式化
Step2:問題についての情報収集(信頼性の高い文献検索)
Step3:情報の批判的吟味
Sttep4:情報の患者への応用
Step5:1-4stepの評価
これら5つのステップ全てを1つずつ踏み、さらにそのステップ間でフィードバックしながら行うものがEBMの実践です。
ここで重要なことが、エビデンスを患者に当てはめるのではなく、患者に応用することです。
EBMの実践においてこのStep4はややもすると無視されがちですが、この点がEBMにおいて最も重要と言えます。
Step4:情報の患者への応用
中川仁先生は患者への応用において、エビデンスの質・患者自身の嗜好や価値観・臨床医の経験が必要だと、論文中で述べています。
エビデンスの質:エビデンスの質を明らかにし、応用することに意味はありますが、必ずしもRCT(ランダム化比較試験)が他の研究よりも優れているとは言えません。
なぜなら、倫理的或いは構造上の問題でRCTが施行できないものもあるためです。
また、明らかに効果が判明している治療法に関しては小さな差を比較し、その効果をみるRCTの手法が選択されない場合もあります。
下記に、エビデンスの質の分類と推奨度を載せます。
臨床医の経験:Step1の患者の問題の定式化という点は十分な経験が必要であり、Step4の患者への応用においては、臨床能力が必要であるので臨床医の経験は重要な要素の1つです。
患者の嗜好・価値観:目前の患者さんに得られた情報を適用するには患者さんの背景や主観など心理社会的要因、嗜好や思考を知り、検討することが重要です。
EBMは患者の主観を重要視するという点からも分かるように、『患者の文脈を尊重し、患者の物語を重視した医療を行うべきという考え』であるNBM(ナラティブ・ベ-スド・メディスン)とは対立しないことが分かります。
EBMとNBMは対立概念ではなく、本来根底は同一であり、より何に(エビデンスまたは患者の物語)注目しているかの違いです。
おわりに
EBMの実践において、医療従事者自身の技術や経験を患者さんの主観や価値観を組み合わせる、あるいは物語として変容させていくことが重要かもしれません。
目前の患者さんの問題の洗い出しから始まる、EBMの5ステップをふんで、エビデンスを編重せず、EBMを実践していくことが、必要なことだと思います。
施術方法
ここまでEBMについて書いてきました。当院でもEBM、そしてNBMを取り入れた施術を行っております。
①整形外科的に患者さんの体の状態をみて、②エビデンスを利用しながらも③患者さんの主観を大事にするNBMを取り入れた身体をみる施術を行っております。
小川鍼灸整骨院は大阪市の平野区と生野区の境目、地下鉄千日前線南巽駅①出口から徒歩1分のところにあります。
大阪市 平野区 加美北 1-1-11
06-6755-6751
参考文献
1)中川 仁:EBMの実践-本来のMcMaster大学方式に則って-.
日本診療情報管理学会会誌.vol.45. No6,p403-410,2002 .
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/45/6/45_6_403/_pdf/-char/ja
2)関本 美穂:EBM(Evidence―based medicine)とエビデンスに基づいた診療ガイドライン.日本膵臓学会誌.vol.21. No6,p479-483,2006 .
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suizo/21/6/21_6_479/_pdf/-char/ja
3)齊尾 武郎:パラダイムシフトという幻想——EBMの時代を生きて——.保健医療社会学論集.vol.28. No2,p36-43,2018 .
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshms/28/2/28_280205/_pdf/-char/ja