肩甲骨の内側が痛い原因は?首・内臓との関係や肩甲骨はがしを解説

肩甲骨内側の痛みの原因のイメージ

肩甲骨の内側の痛みには、首の関節や神経、肩甲骨まわりの筋肉、日常生活での負担など、いくつかの原因が考えられます。まれに内臓からの関連痛がみられることもあります。この記事では、それぞれの原因と対処法について解説します。

(2026年8月9日更新)

この記事の執筆・監修 ポリシー

小川貴司
柔道整復師 / 鍼灸師 / あんまマッサージ指圧師
医療人類学修士(身体症状と心理社会要因の研究)

臨床経験30年以上
症例数15,000件以上

所属学会

・全日本鍼灸学会

・日本統合医療学会

・日本心身医学会

・日本認知行動療法学会

医療連携:整形外科・内科と提携して原因精査を実施

情報の正確性:学術論文および国内診療ガイドラインに準拠

 

はじめに

 

「肩甲骨の内側が痛い」
「背中の奥にずっと違和感がある」
「病院で検査を受けたけれど、特に異常はないと言われた」

 

そんな状態が続くと、

「結局、どこが悪いの?」
「肩甲骨をほぐせばいいの?」
「首が原因なの?」
「内臓の病気ではないの?」

と不安になりますよね。

 

肩甲骨の内側の痛みは、肩甲骨まわりの筋肉だけでなく、首の関節や神経、長時間の同じ姿勢や生活上の負担など、いくつかの原因が関係して起こることがあります。

 

また、まれではありますが、内臓の病気による痛みを肩や背中に感じることもあるため、痛む場所だけを見て原因を決めつけることはできません。

 

この記事では、

・肩甲骨の内側が痛くなる主な原因
・首や頚椎との関係
・筋肉や筋膜が関係する場合
・注意したい内臓からの関連痛
・ストレッチやマッサージなどの対処法
・「肩甲骨はがし」は本当に必要なのか
・実際に肩甲骨内側の痛みが改善した施術例

について、研究結果と30年以上の臨床経験をもとにわかりやすく解説します。

 

特に、

「一度病院を受診したけれど原因がはっきりしない。それでも肩甲骨の痛みが続いている」

という方には、これまでの経過を整理し、次に何を考えればよいのかを知るための参考にしていただければと思います。

 

目次

1. 肩甲骨の内側が痛くなる原因とは?
2. 肩甲骨内側の痛みは首・頚椎が原因になることがある
3. 肩甲骨まわりの筋肉や筋膜が痛みに関係することもある
4. 肩甲骨の痛みで注意したい病気・内臓からの関連痛
5. 肩甲骨が痛いときはどうすればいい?治し方と対処法
6. 「肩甲骨はがし」とは?本当に効果があるのか
7. 肩甲骨はがしを希望して来院されたKさんの改善事例
8. なぜKさんの肩甲骨内側の痛みは改善したのか
9. 肩甲骨はがしだけで改善しない場合に考えること
10. 肩甲骨内側の痛みが続くときは、原因を整理することが大切
11. 肩甲骨内側の痛みに関するよくある質問
12. まとめ|肩甲骨内側の痛みは「どこが原因か」を整理することが大切

 

肩甲骨の内側が痛くなる原因とは?

 

 

 

肩甲骨の内側に痛みを感じると、

「姿勢が悪いから?」
「筋肉が固まっている?」
「肩甲骨が動いていない?」
「首が悪いのでは?」

など、さまざまな原因を考えると思います。

 

実際、肩甲骨の内側に感じる痛みには、ひとつではなく複数の原因が考えられます。

 

代表的なものとしては、

・首の関節や神経から肩甲骨周囲に痛みを感じる
・肩甲骨まわりの筋肉に負担がかかっている
・長時間の同じ姿勢や仕事によって首・肩・背中に負担が蓄積している
・肩や胸郭の動きが悪くなり、肩甲骨周囲に負担が集中している

などがあります。

 

なかでも、肩甲骨の内側が痛む方をみていると、実際に痛みを感じている場所だけに原因があるとは限らないことが重要です。

 

首から出る神経や頚椎の関節に問題がある場合でも、痛みを首ではなく肩甲骨周囲に感じることがあります。

 

2025年に発表された頚椎症性神経根症と肩甲骨周囲痛についてのレビュー(Carmichaelら, 2025)では、86の研究を調べた結果、痛みの分布を記載した研究のうち72%で肩甲骨周囲の痛みが報告されていました。首や腕の症状が目立つ前に、肩甲骨周囲の痛みが先に現れることがあることも報告されています。

 

そのため、

「肩甲骨の内側が痛いから、肩甲骨の筋肉をほぐせばよい」

とは限りません。

 

反対に、肩甲骨内側の痛みがすべて首から起こっているわけでもありません。

 

大切なのは、

どこが痛いかだけではなく、どのような動作で痛むのか、首を動かすと症状が変わるのか、腕や手に症状があるのか、仕事や日常生活でどのような負担がかかっているのか

などを確認しながら原因を考えることです。

 

では、肩甲骨内側の痛みと特に関係することが多い首・頚椎からの痛みについて、もう少し詳しくみていきましょう。

 

肩甲骨内側の痛みは首・頚椎が原因になることがある

 

 

肩甲骨の内側が痛むと、「肩甲骨まわりの筋肉が悪いのでは?」と考えがちですが、首の関節や神経が関係して肩甲骨周囲に痛みを感じることがあります

 

頚椎は、椎間板や左右の椎間関節などによって連結されています。

 

これらの組織に負担がかかった場合、痛みを首だけではなく、肩甲骨の内側や背中に感じることがあります。このように、原因となる場所とは離れたところに感じる痛みを「関連痛」と呼びます。

 

実際、頚椎症性神経根症と肩甲骨周囲の痛みについて86研究を調べた2025年のレビューでは、痛みの分布を記載した81研究のうち、肩甲骨周囲の痛みは72%の研究で報告されていました。

 

さらに、肩甲骨周囲の痛みが、腕の痛みより数週間先に現れることがあることも報告されています(Carmichaelら, 2025)。

 

よって、

肩甲骨の内側だけが痛む段階でも、頚椎からの症状が関係している可能性があります。

 

当院でも、肩甲骨内側の痛みを訴える患者さんには、痛む場所だけではなく首の動きも確認します。

 

 

例えば、天井を見るように首を後ろへ反らしたときに、首の付け根から肩甲骨の内側にかけていつもの痛みが再現される場合があります。

 

頚椎の椎間関節から肩甲骨内側へ痛みを感じることもある

以前から、頚椎の椎間関節と肩甲骨周囲の痛みとの関係も研究されています。

 

頚椎の各椎間関節に刺激を加えた研究では、刺激した高さによって首だけではなく、肩や肩甲骨周囲など異なる場所に痛みを感じることが報告されています。

 

椎間関節ブロックと関連痛

5番目の頚椎と6番目の頚椎の椎間関節に注射を打つと緑の部分に、6番目の頚椎と7番目の頚椎の椎間関節に注射を打つと黄色の部分に、7番目の頚椎と胸椎の1番目の椎間関節に注射を打つと赤の部分に、痛みを感じることを説明しています。

 

このような研究からも、肩甲骨の内側に痛みを感じているからといって、痛みの発生源まで肩甲骨の内側にあるとは限らないことが分かります。

 

そのため、肩甲骨内側の痛みを考えるときには、

・首を動かすと痛みが変化するか
・肩甲骨だけを動かしたときはどうか
・腕や手に痛み、しびれ、違和感がないか
・どのような姿勢や仕事で症状が強くなるか

などを合わせて確認することが大切です。

 

一方で、肩甲骨内側の痛みは首だけで説明できるものではありません。

次に、肩甲骨まわりの筋肉や筋膜そのものが痛みに関係する場合についてみていきます。

 

肩甲骨まわりの筋肉や筋膜が痛みに関係することもある

 

肩甲骨内側の痛みは、首や頚椎だけではなく、肩甲骨まわりの筋肉や筋膜が関係して起こることもあります

 

肩甲骨の周囲には、僧帽筋、菱形筋、肩甲挙筋、棘下筋など多くの筋肉があります。

 

これらの筋肉は、肩甲骨を動かしたり安定させたりするだけでなく、デスクワークやスマートフォンの操作、車の運転など、同じ姿勢を長時間続けるときにも働き続けています。

 

そのため、同じ姿勢が長く続いたり、仕事やスポーツなどで繰り返し負担がかかったりすると、肩甲骨周囲の筋肉に痛みや圧痛が生じることがあります。

 

筋肉の中には、トリガーポイントと呼ばれる押すと深部に響きを感じるポイントがあり、そこから少し離れた場所にも痛み(筋・筋膜性疼痛)を感じることがあります。

 

慢性的な肩の痛みをもつ72人を調べたBronらの研究では、対象者全員に筋・筋膜性トリガーポイントが確認され、特に棘下筋や僧帽筋上部などで活性化したトリガーポイントが多く認められました(Bronら, 2011)。

 

また、筋・筋膜性疼痛は、繰り返しの負荷や長時間の不自然な姿勢、身体活動の低下などとも関連すると考えられています。

 

そのため、

「肩甲骨の内側を押すと痛い」
「長時間座っているとだんだん痛くなる」
「動かしたり温めたりすると少し楽になる」
「肩甲骨まわりが張っているように感じる」

といった場合には、肩甲骨周囲の筋肉が症状に関係している可能性も考えます。

 

ただし、ここで注意したいのは、肩甲骨の内側が硬く感じるからといって、必ずしも“筋膜が癒着している”と断定できるわけではないということです。

 

一般に「肩甲骨はがし」や「筋膜をはがす」という言葉が使われますが、実際の施術で筋膜を物理的にはがしているわけではありません。

 

当院で筋膜リリースを行う場合も、「癒着をはがす」ことだけを目的にするのではなく、肩甲骨周囲の筋肉の緊張や痛み、首や肩の動きなどを確認しながら、動かしやすさや症状の改善を目指します。

 

そして重要なのは、筋肉の痛みと頚椎からの関連痛は、どちらか一方だけとは限らないことです。

 

首から肩甲骨周囲へ痛みが生じ、それによって周囲の筋肉が緊張する場合もあれば、長時間の姿勢や繰り返しの負荷が加わって症状が続くこともあります。

 

そのため、肩甲骨内側の痛みでは、「首なのか筋肉なのか」と単純に二者択一で考えるのではなく、症状の経過や動作、生活上の負担を合わせて考えることが大切です。

 

一方で、肩甲骨周囲の痛みの中には、筋肉や頚椎だけでは説明できず、医療機関での確認が必要なものもあります。

 

次に、肩甲骨の痛みで注意したい病気や内臓からの関連痛について説明します。

 

肩甲骨の痛みで注意したい病気・内臓からの関連痛

 

肩甲骨の内側が痛むと、

「内臓が悪いのでは?」
「何か大きな病気ではないか?」

と心配になる方もいると思います。

 

肩甲骨周囲の痛みは、首や肩甲骨まわりの筋肉などが原因で起こることが多いのですが、まれに内臓の病気による痛みを、肩や背中に感じることもあります。

 

このように、実際に悪くなっている場所とは別のところに痛みを感じることを「関連痛」といいます。

 

胆のうの痛みを右肩に感じることがある

胆石などで胆のう周辺に痛みが起こると、一般的にはみぞおちや右上腹部が痛みます。

 

ところが、人によってはその痛みを右肩や背中の方まで感じることがあります(Diehl, 2003)。

 

また、胆石症の患者さんを調べた研究でも、胆石による痛みを、お腹だけではなく離れた場所に感じる「関連痛」が確認されています(Stawowyら, 2005)。

 

つまり、

「肩が痛いから、肩だけが悪い」

とは限らないということです。

 

心臓の痛みを肩や腕に感じることもある

心臓の病気でも、痛みを胸だけに感じるとは限りません。

 

急性心筋梗塞などでは、胸の痛みが肩や腕の方まで広がることがあります

 

Goodacreらの研究でも、肩や両腕に広がる痛みは、急性心筋梗塞を考えるうえで注意すべき症状の一つと報告されています(Goodacreら, 2002)。

 

ただし、

「右肩甲骨が痛いから胆のうが悪い」
「左肩甲骨が痛いから心臓が悪い」

と、痛む場所だけで病気を判断することはできません。

 

大切なのは、肩甲骨の痛みだけを見るのではなく、

・どのように痛みが始まったのか
・身体を動かすと痛みが変わるのか
・胸やお腹にも症状があるのか
・息苦しさ、吐き気、冷汗などを伴っていないか
・安静にしていても痛みが続いているのか

などを合わせて考えることです。

 

このような症状がある場合は医療機関へ

 

肩甲骨周囲の痛みに加えて、

・胸の痛みや圧迫感がある
・息苦しさや冷汗を伴う
・突然、これまでにない強い痛みが出た
・発熱や強い倦怠感がある
・腹痛や吐き気などを伴う
・安静にしていても強い痛みが続く
・原因不明の体重減少など全身状態の変化がある

といった場合には、「肩甲骨が凝っているだけ」と自己判断せず、まず医療機関で原因を確認することが大切です。

 

特に胸痛、息苦しさ、冷汗などを伴う場合には、緊急性のある病気も考えられるため、速やかな受診が必要です。

 

一方で実際には、

「肩甲骨が痛くて病院を受診したけれど、検査では特に異常が見つからなかった」

という方も少なくありません。

 

重大な病気が否定されたにもかかわらず痛みが続いている場合には、次に首や肩甲骨周囲の筋肉、仕事や生活での負担なども含めて、症状を整理していくことが大切です。

 

次に、肩甲骨が痛いときの治し方や対処法について説明します。

 

肩甲骨が痛いときはどうすればいい?治し方と対処法

 

肩甲骨の内側が痛いとき、

「ストレッチをした方がいい?」
「マッサージでほぐした方がいい?」
「肩甲骨はがしを受けた方がいい?」

と迷う方は多いと思います。

 

ただ、肩甲骨の痛みには首、筋肉、仕事や生活での負担など、いくつかの原因が考えられるため、すべての人に同じ方法が合うわけではありません。

まず、痛みが強いときや、腕・手のしびれ、力の入りにくさ、強い夜間痛などがある場合は、自己流で無理に動かさず、一度医療機関で確認した方がよいでしょう。

 

痛みが落ち着いているなら、無理のない範囲で動かす

重大な病気や強い神経症状がない場合は、無理のない範囲で身体を動かすことが大切です。

 

慢性的な首の痛みに対する研究でも、運動は痛みや動きの改善に役立つ一方、「この運動が一番よい」とまでは決まっていません(Rasmussen-Barrら, 2023)。

 

そのため、

・同じ姿勢を長く続けない
・ときどき首や肩を動かす
・肩甲骨を無理なく動かす
・歩くなど全身を使う

といったことから始めるとよいでしょう。

 

強く押せば押すほど良いわけではありません

30年以上患者さんをみてきた中で、私がよく感じることがあります。

 

痛い場所を長い間グリグリ押し続けている方の中には、だんだん弱い刺激では物足りなくなり、

「もっと強く押してほしい」

と感じるようになる方がいます。

 

そして強い刺激を受けるときに身体へ力が入り、その状態でさらに強く押されることで、施術後に痛みが強くなることがあります。

 

一般には、こうした施術後の痛みを「もみ返し」と呼ぶことがあります。

 

私は臨床経験上、痛い場所を強く押し続けることが、必ずしも改善につながるとは考えていません。

 

むしろ、

「強く押してもらわないと効いた気がしない」

という状態になっている場合には、一度刺激の強さを見直した方がよいと考えています。

 

ストレッチやマッサージだけに頼らない

ストレッチやマッサージで楽になることはあります。

 

それ自体が悪いわけではありません。

 

ただ、肩甲骨の内側の痛みには、首からの関連痛や日常生活での負担が関係している場合もあります。

 

首の痛みに対する研究では、運動だけでなく、手を使った施術と運動を組み合わせる方法も検討されていますが、一つの方法だけですべての人が良くなるわけではありません(Wilhelmら, 2023)。

 

大切なのは、

「どこを押せば治るか」だけではなく、「なぜそこに痛みが出ているのか」を考えることです。

 

病院で「異常なし」と言われたのに痛みが続く場合

肩甲骨の痛みで特に困るのが、

「病院で検査を受けたけれど、特に異常はないと言われた。でも痛みは続いている」

という場合です。

 

この状態になると、

「結局、何が原因なの?」
「このまま放っておいていいの?」
「整体へ行くべき?もう一度病院へ行くべき?」

と、次に何をすればよいのか分からなくなってしまいます。

 

このような場合には、新しい治療を次々に試す前に、

・いつから痛いのか
・どんな検査を受けたのか
・どんな動きで痛むのか
・これまで何を試したのか
・仕事や生活でどんな負担があるのか

を一度整理することが大切です。

 

検査で異常が見つからなかったことと、痛みの理由が何もないことは同じではありません。

 

症状の経過や生活の負担を整理することで、次に何をすればよいのかが見えてくることがあります。

 

そして、肩甲骨をもっと動かした方がいいのでは?と考えたときによく目にするのが、「肩甲骨はがし」です。

次に、肩甲骨はがしとは何なのか、本当に効果があるのかについて説明します。

 

病院では異常なし。でも肩甲骨の痛みが続いていませんか?

病院で検査を受けても原因がはっきりせず、

「ストレッチを続けていいの?」

「もう一度病院へ行くべき?」

「今の治療を続けて大丈夫?」

と迷っている方も少なくありません。

当院では、これまでの症状の経過や検査結果、受けてきた治療などを一緒に整理しながら、

「次に何を確認した方がいいのか」

「今の治療を続けてよいのか」

「身体の動かし方や生活を見直した方がよいのか」

など、今後の方向性を考えるZoomカウンセリングを行っています。

「異常はないと言われた。でも痛い。次に何をすればいいかわからない」

そんな“宙ぶらりん”の状態で困っている方は、一度これまでの経過を一緒に整理してみませんか。

ZOOMカウンセリングについて、どんな風に行うのか、どんな効果が期待できるのかなど詳しく説明していますのでご参照ください。

 

「肩甲骨はがし」とは?本当に効果があるのか

 

「肩甲骨はがし」は、医学的な病名や正式な治療法の名前ではありません。

 

一般には、肩甲骨まわりの筋肉をほぐしたり、肩甲骨を手で動かしたりして、

「肩甲骨を動かしやすくする施術」

をまとめて「肩甲骨はがし」と呼んでいます。

 

では、肩甲骨を動かせば肩甲骨まわりの痛みは良くなるのでしょうか。

 

ここは少し慎重に考える必要があります。

 

「肩甲骨はがし」そのものの効果を調べた医学研究は、私が確認した範囲では十分にありません。

 

一方、原因を一つに特定できない慢性的な首の痛みをもつ人に、肩甲骨を安定させたり動かしたりする運動を行った研究はあります。

 

Seoら(2020)は、そうした研究をまとめて検討し、肩甲骨に対する運動によって、首の痛みなどが改善する可能性があると報告しています。

 

ただし、研究数はまだ少なく、

「肩甲骨を動かせば、どんな肩甲骨の痛みでも治る」

ということが証明されたわけではありません(Seoら, 2020)。

 

これまで説明してきたように、肩甲骨の内側の痛みには、肩甲骨まわりの筋肉だけではなく、首の関節や神経が関係している場合もあります。

 

そのため私は、

「肩甲骨が痛いから、とにかく肩甲骨をはがせばいい」

とは考えていません。

 

大切なのは、肩甲骨だけを見るのではなく、首の動きや痛みの出方、仕事や生活での負担まで確認したうえで、肩甲骨を動かすことがその人に必要なのかを考えることです。

 

実際に当院にも、

「先生、肩甲骨はがしをしてもらえますか?」

と来院された患者さんがいました。

 

ところが詳しくみてみると、肩甲骨まわりだけではなく、首の動きも痛みに関係していました。

 

次に、その患者さんの実際の経過をご紹介します。

 

肩甲骨はがしを希望して来院されたKさんの改善事例

 

Kさんは60歳の男性で、事務職をされています。

長年、首や肩の鈍い痛みを感じておられましたが、3週間ほど前から右の肩甲骨内側に強い痛みを感じるようになりました。

特に夜がつらく、寝返りを打たないと痛くて眠れない日もあったそうです。

 

Kさんは来院されたとき、

「先生、肩甲骨はがしってできますか?YouTubeで見て、自分もやってもらったら楽になるような気がするんです」

と話されました。

 

最近はYouTubeやSNSでも「肩甲骨はがし」という言葉をよく見かけますので、

「自分の肩甲骨も張り付いているのでは?」
「はがしてもらえば楽になるのでは?」

と考える方は少なくありません。

 

ただ、Kさんの身体を確認すると、肩甲骨まわりだけをみていればよい状態ではありませんでした。

 

首を後ろへ反らす動きをしてもらうと、普段感じている右肩甲骨内側の痛みが再現されたからです。

 

これまで説明してきたように、首の関節や神経に関係する症状でも、肩甲骨周囲に痛みを感じることがあります。

 

そのためKさんには、

「肩甲骨が悪いから痛い」と最初から決めつけるのではなく、首から肩甲骨にかけての状態を一緒に確認しながら施術を進める

ことにしました。

 

4回の施術で痛みは10から3へ

Kさんには週2回、2週間で計4回の施術を行いました。

主に肩甲骨周囲への筋膜リリースを行いながら、首や肩の動きも確認し、その時々の症状について説明しました。

施術後の変化は次のようなものでした。

初回
「背中にあった“しこり”みたいな感じがなくなって、少し楽になった」

2回目
「一点にあった痛みがぼやけてきた」

3回目
「肩の違和感が取れて、夜の痛みもなくなった」

4回目
「肩甲骨の内側の痛みはほとんどなくなった。軽くなった感じがする」

初診時に10と表現されていた痛みは、4回目には3程度まで軽減し、夜も眠れるようになりました。

 

 

そしてKさんは最後に、

「はがれたように感じます」

と話されました。

 

実際に肩甲骨がどこかから「はがれた」わけではありません。

 

しかしKさんが最初に感じていた、

「肩甲骨の奥に何かが張り付いているような感じ」

が改善したことを、Kさん自身は「はがれた」という言葉で表現されたのだと思います。

 

この症例で大切なのは、肩甲骨はがしをしたから治った、と単純に考えないことです。

次に、Kさんの肩甲骨内側の痛みがなぜ改善したのか、私がどのように考えて施術を行ったのかについて説明します。

 

 なぜKさんの肩甲骨内側の痛みは改善したのか

 

Kさんの症状が改善した理由を、一つに決めることはできません。

 

ただ、施術を進める中で私は、

・首の動きと肩甲骨内側の痛みが関係していた
・肩甲骨まわりの筋肉にも強い緊張があった
・「肩甲骨が張り付いている」という本人の感覚が強かった

この3つが関係していると考えました。

 

そのため、肩甲骨まわりだけを強くほぐすのではなく、首や肩の動きを確認しながら筋膜リリースを行い、

 

「肩甲骨そのものが悪いとは限らないこと」
「首から肩甲骨周囲に痛みを感じることもあること」

をKさんに説明しました。

 

私は、こうした症状について理解してもらうことも施術の一部だと考えています。

 

痛みの理由が分からないままだと、

「ここが壊れているのでは?」
「もっと強く押してもらわないと治らないのでは?」

と不安になりやすくなります。

 

一方で、自分の身体で何が起きているのかをある程度理解できると、必要以上に痛みを怖がらずに身体を動かしやすくなることがあります。

 

Kさんの場合も、筋膜リリースだけではなく、

首と肩甲骨の関係を一緒に確認しながら、本人が感じていた「張り付いている感じ」を整理していったこと

が、改善につながった可能性があると考えています。

 

もちろん、この症例だけから「肩甲骨はがしをすれば肩甲骨の痛みが治る」とはいえません。

 

大切なのは、その人の痛みの出方や経過を確認し、必要な対処を選ぶことです。

 

次に、肩甲骨はがしを受けても改善しない場合に、どのようなことを考えればよいのか説明します。

 

肩甲骨はがしだけで改善しない場合に考えること

 

肩甲骨はがしやマッサージを受けると、その場では楽になることがあります。

 

しかし、

「その日は楽だけど、すぐ元に戻る」
「何回受けても同じ場所が痛くなる」
「だんだん強い刺激でないと効いた感じがしない」

という場合は、肩甲骨まわりだけを繰り返し刺激するのではなく、一度原因を整理し直した方がよいかもしれません。

 

これまで説明してきたように、肩甲骨内側の痛みには、

・首の関節や神経
・肩甲骨まわりの筋肉
・長時間の同じ姿勢
・仕事や運動での繰り返し負担

など、複数の要因が関係することがあります。

 

そのため、肩甲骨をほぐしても繰り返す場合には、

「本当に肩甲骨だけを見ていてよいのか?」

を考えることが大切です。

 

特に、

・首を動かすと肩甲骨の痛みが変わる
・腕や手にも痛みやしびれがある
・仕事中や特定の姿勢で悪化する
・治療を受けても改善が長続きしない

といった場合は、首や日常生活での負担まで含めて見直す必要があります。

 

また、

「病院では異常なしと言われた。でも痛い」

という方もいます。

 

このような場合、原因が何もないというより、画像検査だけでは説明しきれない要素が残っていることがあります。

 

大切なのは、新しい治療法を次々に探すことより、

これまでの経過、検査結果、痛みの出方、受けてきた治療、生活の中での負担を一度整理することです。

 

そうすることで、

「もう一度医療機関で確認した方がよいのか」
「身体の動かし方を見直した方がよいのか」
「今の治療を続けてよいのか」

といった次の選択肢が考えやすくなります。

 

次に、肩甲骨内側の痛みが続いている方にとって、なぜこの「整理すること」が大切なのかを説明します。

 

肩甲骨内側の痛みが続くときは、原因を整理することが大切

 

肩甲骨の痛みが続いている方の中には、

「病院で検査を受けたけれど、特に異常はないと言われた」
「でも痛みは続いている」

という方が少なくありません。

 

こうなると、

「結局、何が原因なの?」
「このまま様子を見ていて大丈夫?」
「もう一度病院へ行くべき?」
「整体や鍼を受けた方がいい?」

と、次に何をすればよいのか分からなくなってしまいます。

 

私は、このような原因がはっきりしない“宙ぶらりん”の状態が、痛みそのものと同じくらい患者さんを困らせることがあると感じています。

 

 

このような場合に大切なのは、無理に一つの原因を決めることではありません。

 

まず、

・いつから、どのように痛みが始まったのか
・これまでどんな検査を受けたのか
・医療機関ではどのように説明されたのか
・どの動きや姿勢で痛みが変わるのか
・これまでどんな治療を受け、何が変わったのか
・仕事や生活の中でどんな負担がかかっているのか

を一つずつ整理していきます。

 

そうすることで、

「もう一度医療機関で確認した方がよいのか」
「今の治療を続けてもよいのか」
「身体の動かし方や生活を見直した方がよいのか」

といった次の選択肢が見えやすくなります。

 

当院のZoomカウンセリングも、このように一度医療機関を受診したものの原因がはっきりせず、肩甲骨の痛みが続いている方を主な対象としています。

 

診断を行うものではありませんが、これまでの経過や検査結果、現在の症状を一緒に整理し、これから何を確認し、どう対処していくかを考えるためのカウンセリングです。

 

「異常はないと言われた。でも痛い」

 

そんな状態で次にどうすればよいのか分からなくなっている方は、一度これまでの経過を整理してみることをおすすめします。

 

肩甲骨の痛み、原因がわからないままで大丈夫?

肩甲骨の痛みでは、

「病院で検査を受けたけれど、異常はないと言われた」

「それでも肩甲骨の痛みが続いている」

「首が原因なのか、筋肉が原因なのかわからない」

「このまま様子を見ていいのか、もう一度受診した方がいいのかわからない」

そんなふうに、原因がはっきりしないまま困っている方も少なくありません。

遠方で来院が難しい方には、これまでの症状の経過や検査結果、現在の痛みの出方、受けてきた治療などを丁寧に伺いながら、今の状況を一緒に整理するZoomカウンセリングを行っています。

診断を行うものではありませんが、

「次に何を確認した方がいいのか」
「今の治療を続けてよいのか」
「もう一度医療機関を受診した方がよいのか」

など、今後の方向性を一緒に考えていきます。

「異常はないと言われた。でも痛い。これからどうすればいい?」

そう感じている方は、一度これまでの経過を一緒に整理してみませんか。

ZOOMカウンセリングについて、どんな風に行うのか、どんな効果が期待できるのかなど詳しく説明していますのでご参照ください。

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FAQ(よくある質問)

肩甲骨の内側が痛いときは何科を受診すればいいですか?

まずは整形外科が一般的です。

特に、腕や手のしびれ、力の入りにくさ、首を動かしたときの強い痛みなどがある場合は、頚椎や神経の状態を確認してもらうとよいでしょう。

また、胸痛や息苦しさ、腹痛、発熱などを伴う場合は、整形外科だけでなく内科的な病気も考える必要があります。

肩甲骨の内側の痛みは内臓が原因のこともありますか?

あります。

頻度としては首や筋肉などが関係することが多いですが、胆のうや心臓など内臓の病気による痛みを、肩や背中に感じることもあります。

特に、胸の圧迫感、息苦しさ、冷汗、腹痛、吐き気などを伴う場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。

肩甲骨の痛みは首が原因になることがありますか?

あります。

頚椎の関節や神経に問題がある場合でも、痛みを首ではなく肩甲骨の内側や背中に感じることがあります。

実際、頚椎症性神経根症では肩甲骨周囲の痛みがみられることがあり、腕の痛みやしびれより先に肩甲骨周囲の痛みが出る場合も報告されています。

肩甲骨が痛いときはストレッチしても大丈夫ですか?

痛みが強くなく、腕や手のしびれ、力の入りにくさなどがなければ、無理のない範囲で身体を動かすことは一つの方法です。

ただし、

「痛いほど伸ばした方が効く」

ということではありません。

ストレッチをすると痛みが強くなる場合や、何週間も改善しない場合は、一度原因を確認した方がよいでしょう。

肩甲骨はがしには効果がありますか?

「肩甲骨はがし」は正式な医学用語ではありません。

肩甲骨まわりをほぐしたり動かしたりすることで楽になる方はいますが、肩甲骨の内側の痛みがすべて肩甲骨の硬さから起こっているわけではありません。

首の関節や神経が関係している場合もあるため、

「肩甲骨が痛い=肩甲骨をはがせば治る」

とは考えない方がよいでしょう。

病院で「異常なし」と言われたのに、なぜ痛みが続くのですか?

画像検査などで大きな異常が見つからなくても、痛みが続くことはあります。

首や肩甲骨まわりの筋肉、仕事や生活での負担など、画像だけでは分かりにくい要素が症状に関係している場合もあります。

このようなときは、

・これまでどんな検査を受けたのか
・いつからどのように痛むのか
・どんな動作や姿勢で変化するのか
・これまで何を試したのか

などを一度整理することが大切です。

Zoomカウンセリングでは何を相談できますか?

当院のZoomカウンセリングは、特に

「一度病院を受診したけれど、原因がはっきりしない」
「異常なしと言われたのに痛みが続いている」
「次に何をすればいいのか分からない」

という方を対象にしています。

診断を行うものではありませんが、これまでの症状の経過や検査結果、現在困っていることを一緒に整理し、

「もう一度医療機関で確認した方がよいのか」
「今の治療を続けてよいのか」
「身体の動かし方や生活を見直した方がよいのか」

など、今後の方向性を考えるお手伝いをします。

 

 まとめ|肩甲骨内側の痛みは「どこが原因か」を整理することが大切

 

肩甲骨の内側が痛む原因は、ひとつではありません。

 

首の関節や神経が関係している場合もあれば、肩甲骨まわりの筋肉、長時間の同じ姿勢、仕事や運動での負担などが関係していることもあります。

 

また、まれではありますが、内臓の病気による痛みを肩や背中に感じることもあります。

 

そのため、

「肩甲骨が痛いから肩甲骨をほぐせばよい」
「肩甲骨はがしを受ければ治る」

と単純に考えるのではなく、まずは自分の痛みがどのような経過で起こり、どんな動きや姿勢で変化するのかを確認することが大切です。

 

今回ご紹介したKさんも、「肩甲骨はがしをしてほしい」と来院されましたが、詳しくみていくと肩甲骨まわりだけではなく、首の動きも症状に関係していました。

 

肩甲骨内側の痛みで特に困るのは、

「病院では異常なしと言われた。でも痛みは続いている」

という場合です。

 

このようなときは、原因を無理に一つに決めるのではなく、

・これまでの症状の経過
・受けた検査や説明
・痛みが出る動きや姿勢
・これまで受けた治療
・仕事や生活での負担

を一度整理してみることが大切です。

 

それによって、

「もう一度医療機関で確認するべきか」
「今の治療を続けてよいのか」
「身体の動かし方や生活を見直した方がよいのか」

といった次の選択肢が見えやすくなります。

 

当院では、来院が難しい方や、病院を受診しても原因がはっきりせず困っている方に対して、Zoomカウンセリングも行っています。

診断を行うものではありませんが、これまでの経過や検査結果、現在の症状を一緒に整理し、今後どう考えていけばよいのかを一緒に確認していきます。

 

肩甲骨の痛みが続き、

「このままでいいのかな」
「次に何をすればいいのか分からない」

と感じている方は、一度これまでの状況を整理してみてください。

ZOOMカウンセリングについて、どんな風に行うのか、どんな効果が期待できるのかなど詳しく説明していますのでご参照ください。

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当院では

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ZOOMカウンセリングについて、どんな風に行うのか、どんな効果が期待できるのかなど詳しく説明していますのでご参照ください。

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当院のクチコミ

 

当院ではこれまで、どこに行っても良くならない多くの患者さんの施術を行ってきました。

 

それらの一部の患者さんからは、とてもありがたいクチコミコメントを頂いております。

 

カウンセリングをご検討の方は参考までにクチコミ内容をご確認ください。

 

 

また当院では全国から寄せられたお悩みに対してYouTubeでお答えしています。

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「どこに行っても良くならない痛みの相談室」もご覧ください。

どこに行っても良くならない痛みの相談室

当院に寄せられた痛みの相談についてお答えしています。また、ブログの内容も動画でお伝えしています。

 

参考文献

 

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Wilhelm M, Cleland J, Carroll A, Marinch M, Imhoff M, Severini N, et al. The combined effects of manual therapy and exercise on pain and related disability for individuals with nonspecific neck pain: a systematic review with meta-analysis. J Man Manip Ther. 2023;31(6):393-407. doi:10.1080/10669817.2023.2202895.

 

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