はじめに
胸郭出口とは鎖骨と一番上の肋骨(第1肋骨)が作る空間 のことです。
胸郭出口症候群はこの空間が何らかの理由で狭くなることで、そこを通る血管や神経の束が圧迫され、
首から肩、腕にかけて痛みやだるさ、手のしびれなどの症状が起こる病気です。
なで肩の20~30歳代の女性に多く、また腕を挙げた姿勢の仕事の方、
例えばや美容師さんや理容師さんに多くみられます。
男性では筋力トレーニングを良くする人や筋肉質などにも見られます。
原因
鎖骨と第1肋骨が作る空間が狭くなり起こる、胸郭出口症候群の原因の代表的なものは4つあります。
①斜角筋症候群:首から肋骨にかけて付いている斜角筋という筋肉をくぐりぬける所で神経や血管が圧迫されているタイプ。
②肋鎖症候群:鎖骨と第1肋骨との間で圧迫されているタイプで、胸郭出口症候群の中で最も多く見られる。
③小胸筋症候群(過外転症候群):肋骨の前面から肩甲骨の烏口突起にかけて付いている小胸筋という筋肉の下で圧迫されているタイプ。
④頚肋症候群:第1肋骨の上に、頚肋という異常な骨が出て来て、それが圧迫の原因となるタイプ。
症状
主な症状としては、腕から手にかけてのしびれ感やだるさ、痛み、肩こり、首の痛み等があります。
しびれは手の小指側(4指・5指)に感じることが多いのが特徴です。
こうした腕の症状がつらいために、吊革につかまれない、高い所に洗濯物を干せないという人もいます。
また、血流が悪くなることで、脈拍が弱くなったり、手が冷えたりすることや自律神経が影響を受けるため、
頭痛やめまいなどを伴うこともあります。
悪化例では、手指の運動障害や握力低下がみられ、手内在筋(手の筋肉)が萎縮し、手の甲の骨の間がへこみ、
小指球筋(手のひらの小指側)がやせてきます。
治療法
頚から肩、手にかけての痛みは他の病気でも起こります。
そのため、胸郭出口症候群を各種テストにてしっかりと判別することが重要です。
そして胸郭出口症候群の中でもどのタイプか確認し、治療に当たります。
基本的に保存療法(筋力強化や姿勢矯正)が選択され、同時に日常生活における予防も行なって行きます。
筋力強化は首から肩にかけて、特に僧帽筋や肩甲挙筋の強化運動訓練を行い、神経・血管
が通る空間に広がりをだすことが重要になります。
また、負荷がかかっている筋肉(小胸筋、斜角筋等)に対して、ストレッチを行います。
予防は、腕を酷使しないことが大切で、なるべく重量物を持ち上げるような運動や労働を避けておきます。
姿勢が悪いとその空間が狭まり易くなるので、姿勢改善のために専用の装具を着けることもあります。
おわりに
胸郭出口症候群は適切な治療を行うことで軽快する病気です。
しかし、胸郭出口症候群の症状である、首から肩、腕にかけて痛みやだるさ、手のしびれなどは他の病気でも起こり、
中にはレッドフラッグ(重篤な病気)もあるため、それを見極めることはとても重要です。
病気を鑑別し、安心・信頼できる先生に見てもらうことが大切ですね。
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