はじめに
小川鍼灸整骨院のブログです。患者さんからよく、「先生、はりってどれぐらい入ってるの?」と聞かれる事があります。患者さんの症状や用いる手技によって変わってくるのでその都度答える様にしているのですが、はりの深さと治療効果についての研究を見つけましたの。今回は、「肩こりに対する鍼の刺入深度の違いによる効果の相違 ~予備的ランダム化比較試験~」という論文を紹介いたします。
小川鍼灸整骨院は大阪市の平野区と生野区境目の加美北地区にあります。住所的にはちょっとややこしい地域です。最寄りの駅は地下鉄千日前線、南巽駅1番出口から徒歩1分のところにあります。
執筆担当は小川です
http://www.korikori.com/staff/
内容
はじめに
多くの人が困っている肩こり。人によってその症状はまちまちでそれが故に治療の方法もまちまちで捉えどころがない。はり治療を受ける人も多いことからこの研究では鍼の深さが治療効果と関係するかどうかを検討した。
対象と方法
6ヵ月以上続く61歳から66歳までの肩こり患者16名を、浅くはりをする8例のグループ(浅鍼群)と深くはりをする8例のグループ(深鍼群)に分けて治療を行なった。治療のポイントは患者が肩こりを自覚する部位に最大10カ所とした。深さは浅鍼群は皮膚を少し貫く程度(約5ミリ)、深鍼群は1センチから2センチ程度として、刺したはりはすぐに抜くようにした。この治療を週に1回、合計5回行なった。治療の評価は、治療直後と最終治療日のあと、4週間経過した時点(治療開始から8週間後)に行なった。
評価は
①肩こりの程度、
②はり治療の効果が日常生活を改善させたか
③はりを刺したときの感覚
④治療に対する満足度
について行なった。
結果
①はりを行なった直後の肩こりの程度は、深鍼群のほうが浅鍼群よりも楽になっていた(深鍼のほうがよく効いた)。しかし、最初の治療前と5回目の治療前の肩こりの程度を比べると、深鍼群の方がよく効いていたが、統計的には有意な差がないと判定された。よって、どちらの方がよく効いたのかはわからない。初回治療前と5回目の治療が終わって4週間経過した時点での肩こりの程度は、深鍼群のほうがよく効いていた。
②日常生活における改善度は深鍼群の方が数字的には改善の度合いは大きいけれども統計学的な処理を施した結果は差がないとなった。
③はりをした時の感覚は特に響きが、深鍼群で全例の患者が感じていた。また、浅鍼群は全例の患者が響きを感じていたなかった。
④はりに対する満足度
深鍼群では大満足が3名、満足が3名、普通が1名であり、浅鍼群では満足が4名、普通が2名であった。
考察
・肩こりの原因は複合的でありながら筋肉の緊張を引き起こす。だから筋肉に対してはりを刺す際に深さの違いと効果について考えることは意義深い。これまでの研究で同様の研究はあったが、腰痛や肩痛に対しては深部まで刺した方が効果が高いという研究結果が得られている。でも、膝に関しては浅い、深いには関係がなかった。
・痛みの原因となっている筋を同定してその筋を刺激することで筋が緩んで血流が改善されることが確認されていることから、はりの効果は問題のある筋肉の深さまで到達することが重要ではないか。
・痛みのある組織は感作された状態であり、その部位へ刺激が入力されると響きを感じると考えられるがこのことが、深鍼群と浅鍼群の響きの違いにつながった。また、響きが治療効果に直結する理由もここにあると考えられる。
・効果を得るための刺鍼の深さは画一的なものではなく、問題となっている筋の深さによって変化する。膝は浅いところに感覚受容器が多いため、鍼刺入の深さと効果に差がなかったと考えられる。
当院の見解
シンプルで素晴らしい論文ですね。筆者は腰に対しても同様の研究を行なっております。業界にとって、非常に価値ある意義深い研究であると思います。今後の研究に期待大ですね。
当院でははり治療を受けたことがない患者さんに対して、積極的に鍼を行う事はあまりありません。理由は当院で設定された料金が比較的に価格設定が高いことと、他の治療法でも痛みを小さくすることができると考えるからです。身体にはりを刺すわけですから、やはり緊張もしますし、不安も出てくると思うのです。そのところはしっかりと話し合って決めています。
ですので、過去に治療経験があり、ポジティブな結果を得られた患者さんには積極的にはり治療を行ないます。
また、そのような患者さんに対しては、痛みの部位を探し出し、動きも見ながら、関節に痛みがあるのか、筋肉に痛みがあるのかを見極めて、痛のある部位にはりを届かせるようにします。
時にはりを希望される患者さんの中には、「この症状は指で治療されるだけではもう届かない。はりで奥まで刺激してくれないと効かないと思う」と経験的に表現される方がいますが、全くその通りですね。深鍼群の方が浅鍼群よりもはりに対する満足度が高いという結果でたが、これも文献通りですね(笑)。まあ、症例数が少ないのでなんとも言えないですが。
また小川鍼灸整骨院では、はり治療をしたことがないという患者さんに対しても、患者さんが希望されれば行ないます。そのような患者さんははり治療に期待されていると思います。
効果が引き出せる条件のひとつに、患者さんが治療に対して期待を持つことが挙げられます。ですので、患者さんがはじめてであったとしても、強い希望があれば喜んではり治療をさせて頂きますので、どうぞお申し付けください。
痛みの部位をしっかりと見極め、その部分に刺激を与えて痛みを小さくする。
この方法で多くの患者さんの肩こりが楽になっていきます。
しかし、これだけでは治療は完全ではありません。
患者さんの痛みは身体だけで感じているのではなく、頭でも感じています。つまり、肩こりに対する考え方や解釈の仕方、より大きくいうと、自分の体に対するイメージを作りかえる必要があります。
当院では、身体だけではなく、認知行動療法的なかかわりを通して、患者さんの肩こりを内側から(頭のなかから)治療していくことを提案しています。
これが根本的に治ることだと当院は考えています。
おわりに
大阪市の平野区、生野区界隈でどこに行ってもよくならない肩こりでお悩みの方は是非とも小川鍼灸整骨院にご相談下さい。小川鍼灸整骨院は大阪市の平野区と生野区の境目、加美北地区、地下鉄千日前線南巽駅①出口から徒歩1分のところにあります。
参考文献
大﨑彩加他):肩こりに対する鍼の刺入深度の違いによる効果の相違 予備的ランダム化比較試験.全日本鍼灸学会雑誌,68 巻 1 号, p. 10-20 ,2018.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/68/1/68_10/_pdf/-char/ja